補助金の賃上げ要件ガイド
ものづくり補助金・省力化投資補助金で必須の賃上げ要件。給与支給総額CAGR+2.0%の計算式、対象・除外項目、未達時の返還額の算出方法を具体例で解説。
1賃上げ要件とは — なぜ補助金に「賃上げ」が求められるのか
「補助金500万円を受け取ったのに、数年後に返還を求められた」— これは賃上げ要件の未達で起こりうるケースです。主要補助金には「賃上げ要件」が組み込まれており、採択後に達成できなければ補助金の返還を求められます。申請前にこの仕組みを正確に理解しておくことが不可欠です。
2026年度の主な賃上げ要件は以下の通りです。
| 補助金 | 賃上げ要件 | 判定指標 |
|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 必須 | 給与支給総額 年率+2.0%以上 |
| 省力化投資補助金 | 必須 | 1人あたり給与 年率+3.0%以上(※最新の公募要領で確認してください) |
| 新事業進出補助金 | 必須 | 給与支給総額+2.5%以上 or 最低賃金+30円以上 |
| 持続化補助金 | 加点項目 | 事業場内最低賃金の引き上げ |
注意すべきは、これらは「努力目標」ではなく「義務」であるということです。採択後に未達が判明すると、補助金の一部または全額の返還を求められます。
※本記事の情報は執筆時点のものです。補助金制度は公募回ごとに要件が変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
2給与支給総額の正しい計算方法 — 何を含め、何を除外するか
賃上げ要件の判定で最もつまずきやすいのが「給与支給総額」の定義です。直感的な「人件費」とは範囲が異なります。
含まれるもの(対象): - 基本給・諸手当(通勤手当・住宅手当・家族手当等) - 時間外手当・休日手当・深夜手当 - 賞与・一時金 - パート・アルバイトの給与
含まれないもの(除外): - 役員報酬(取締役・監査役等) - 退職金・退職手当 - 法定福利費(社会保険料の事業主負担分) - 通勤定期券の現物支給分
計算式: CAGR(年平均成長率)= (最終年度の給与支給総額 / 基準年度の給与支給総額)^(1/年数) - 1
具体例: 基準年度の給与支給総額が3,000万円、3年後に3,185万円以上なら年率+2.0%を達成。 3,000万円 × (1.02)^3 = 3,183.6万円(≒3,184万円)が最低ライン。
従業員の退職・入社による変動にも注意が必要です。従業員数が減った場合、総額は減っても1人あたり給与は増える可能性があるため、「総額」と「1人あたり」のどちらの指標が適用されるかを確認してください。
3未達時の返還額はいくら? — 算出フローと免除条件
賃上げ要件が未達の場合、返還額は以下のように計算されます。
返還額 = 補助金交付額 × (未達割合に応じた係数)
具体的な係数は補助金ごとに異なりますが、ものづくり補助金の場合は「補助金額の全額返還」が原則です。ただし、天災・パンデミック・取引先の倒産など不可抗力による場合は、返還免除の申請が可能です。
返還免除が認められる主な条件: - 付加価値額が目標の50%以上かつ賃上げが1.5%以上(部分達成) - 事業年度の営業利益が赤字(天災・疫病等に起因) - 取引先の倒産により売上が急減した場合
重要なのは、返還リスクを申請段階で認識し、無理のない賃上げ計画を立てることです。「加点を取りたいから高めの賃上げ計画を書く」のは危険です。達成できなければ加点どころか補助金の返還を求められます。
4申請前にやるべき賃上げシミュレーション
賃上げ要件の未達リスクを下げるには、申請前のシミュレーションが不可欠です。以下のステップで確認してください。
- 過去3期分の給与支給総額を決算書から抽出する
- 現在の給与水準でCAGR+2.0%を達成するために必要な年間増額を算出する
- 従業員の退職・入社予定を加味して、3〜5年後の給与総額を予測する
- 売上・利益の見通しと照らし合わせ、賃上げ余力があるか確認する
- 最低賃金の引き上げ分だけで要件を満たせるか確認する(地域別最低賃金の推移を参照)
中小企業の場合、最低賃金の改定(年率3%程度の上昇が続く)だけで要件の大部分を満たせるケースも多くあります。無理に基本給を大幅に上げなくても、自然な賃金上昇で達成できるかどうかを冷静に判断しましょう。
補助金GOのAIでは、入力された企業情報をもとに賃上げ要件の達成可能性を事前チェックし、リスクが高い場合は代替プランを提案します。
5よくある質問(FAQ)
Q: 最低賃金の引き上げだけで賃上げ要件を満たせますか? A: 地域別最低賃金は年率3%程度の上昇が続いており、最低賃金の引き上げだけで要件の大部分を満たせるケースもあります。ただし、賃上げ要件の指標が「給与支給総額」なのか「1人あたり給与」なのかによって計算方法が異なるため、公募要領で正確な指標を確認してください。
Q: 役員報酬は賃上げの計算に含まれますか? A: 「給与支給総額」の計算には役員報酬は含まれません。ただし、「付加価値額」の計算では役員報酬を含む人件費が計上されます。両者を混同しないよう注意してください。
Q: 従業員が退職して給与総額が下がった場合はどうなりますか? A: 従業員数の減少により給与支給総額が下がると、年率+2.0%の要件を満たせなくなるリスクがあります。1人あたり給与は増えていても「総額」で判定される制度では不利になります。退職リスクも含めたシミュレーションが必要です。
Q: 賃上げ要件の未達で本当に返還が発生するのですか? A: はい、実際に返還が求められるケースはあります。ただし、天災・パンデミック・取引先倒産など不可抗力の場合は返還免除の申請が可能です。事前に達成可能な計画を立て、リスクを認識した上で申請してください。
補助金GOでは、AIが審査基準に沿った申請書ドラフトを自動生成します。まずは無料でお試しください。
参考にした公式情報
制度情報は公募回ごとに更新されます。申請前には必ず最新の公募要領・交付規程をご確認ください。
受給額シミュレーション
クリックするだけで受給可能性と想定金額を即算出
業種 *
従業員数 (任意)
資本金(万円) (任意)
関連する記事
補助金の加点項目攻略ガイド
補助金審査で加点される7つの項目(経営革新計画、BCP、SECURITY ACTION、賃上げ、被災事業者、デジタル化、パートナーシップ構築宣言)を取得方法・取得期間・コストまで完全解説。
申請ガイド補助金 採択後にやることガイド
補助金は採択されてからが本番。交付決定→事業実施→実績報告→概算払い→事業化状況報告の5フェーズで必要なタスクを網羅。証憑管理・相見積もり・収益納付など、採択後に知っておくべき全知識。
制度解説2026年度の補助金制度変更まとめ
2026年度の主要な補助金制度変更を解説。事業再構築補助金の廃止と新事業進出補助金の新設、省力化投資補助金の上限額拡大、賃上げ要件の強化など、押さえるべき6つの変更点。