補助金の数値計画の書き方
補助金の審査で不採択になる最大の原因は数値計画の甘さ。売上予測の根拠の作り方、付加価値額の計算、P/L・B/S・CFの整合性チェックを実例付きで解説。
1審査員は数値計画のここを見ている — 「根拠なき楽観」が最大の不採択理由
補助金の審査員が事業計画書の数値計画を評価する際、最も重視するのは「数字の根拠」です。「売上が30%増加する」と書いてあっても、その30%の根拠が示されていなければ「楽観的な希望」と判断されます。
審査員が確認する3つのポイント:
1. 現状(ベースライン)との連続性があるか 過去3期の実績から見て、計画数値が「飛躍」していないか。前年比10%の成長企業が突然50%成長を計画しても説得力がありません。
2. 補助事業との因果関係が数字で示されているか 「この設備を導入すると、なぜ売上がX万円増えるのか」を、生産能力・処理時間・不良率などの具体的なKPIで説明できているか。
3. リスクシナリオが記載されているか 楽観・中立・保守の3パターンを提示し、保守シナリオでも投資回収が可能であることを示すと、審査員の信頼感が大幅に向上します。
例: 製造業で新設備を導入する場合 - 楽観: 受注が計画比120%で推移 → 3年目黒字化 - 中立: 受注が計画通り100% → 4年目黒字化 - 保守: 受注が計画比80%に留まる → 5年目黒字化 「保守でも5年以内に投資回収できる」と示すことで、審査員は「仮にうまくいかなくても企業が存続できる」と判断できます。
※本記事の情報は執筆時点のものです。補助金制度は公募回ごとに要件が変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
2売上予測の根拠の作り方 — ボトムアップとトップダウンの2アプローチ
アプローチ1: ボトムアップ(積み上げ)法 自社の実績データを基に、具体的な数値を掛け合わせて売上を予測します。
製造業の例: 現在の月間生産能力 100台 × 不良率5% = 出荷可能 95台 → 新設備導入後: 月間生産能力 150台 × 不良率2% = 出荷可能 147台 → 増加分 52台 × 単価20万円 = 月間売上増加 1,040万円 → 年間売上増加 12,480万円(稼働率80%補正後: 9,984万円)
飲食店の例: 席数30席 × 回転率2.5回 × 客単価3,500円 × 営業日数25日 → 月商656万円 → 補助事業で席数40席に拡張 → 月商875万円(差額219万円の増収)
アプローチ2: トップダウン(市場シェア逆算)法 TAM(市場全体)→ SAM(参入可能市場)→ SOM(獲得可能市場)と絞り込む方法。新規事業や新製品の場合に有効です。
重要なのは、両方のアプローチで計算し、結果が近い値になることで数字の信頼性を担保することです。大きな乖離がある場合は、前提条件の見直しが必要です。
3付加価値額の正しい計算と目標設定
ものづくり補助金では「付加価値額の年率+3%以上」、新事業進出補助金では「年率+4%以上」の向上が必須要件です。付加価値額の定義を正確に理解しましょう。
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
注意点1: 「営業利益」であって「経常利益」ではない 営業外収益(受取利息等)や営業外費用(支払利息等)は含みません。
注意点2: 「人件費」には役員報酬も含む 賃上げ要件の「給与支給総額」とは異なり、付加価値額の計算では役員報酬も人件費に含めます。
注意点3: 設備投資の減価償却費が付加価値額を押し上げる 補助金で設備を導入すると、その減価償却費が付加価値額に加算されます。つまり、設備投資自体が付加価値額の向上に貢献します。この点を計画書に明記すると、審査員に「仕組みを理解している」と好印象を与えます。
| 項目 | 基準年度 | 1年後 | 2年後 | 3年後 | CAGR |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業利益 | 500万 | 600万 | 700万 | 800万 | +17.0% |
| 人件費 | 2,000万 | 2,060万 | 2,122万 | 2,186万 | +3.0% |
| 減価償却費 | 200万 | 400万 | 400万 | 400万 | — ※ |
| 付加価値額 | 2,700万 | 3,060万 | 3,222万 | 3,386万 | +7.8% |
※ 減価償却費は設備導入初年度に200万→400万と増加し以降定額のためCAGRでの評価は不適切。付加価値額全体としてCAGR+7.8%で要件(年率+3%)を余裕を持って達成。
4財務3表の整合性チェック — 審査前に必ず確認する5項目
数値計画で最もプロの差が出るのが「財務3表(P/L・B/S・CF)の整合性」です。以下の5項目を申請前にチェックしてください。
- P/Lの売上原価率が過去実績と大きく乖離していないか(設備導入で原価率が改善する場合はその理由を記載)
- 設備投資の減価償却開始タイミングがP/Lに正しく反映されているか(導入月の翌月から月割計算)
- B/Sの固定資産が設備投資額と整合しているか(圧縮記帳を適用する場合は取得価額から減額)
- CFの投資キャッシュフローに設備投資額が計上されているか(補助金入金はCFのタイミングで計上)
- 借入金の返済スケジュールがCFに反映されているか(つなぎ融資の返済も含む)
これらの項目は、顧問税理士や認定支援機関に確認してもらうのが最も確実です。数字の矛盾は審査員に「計画の信頼性が低い」と判断される最大の原因です。
補助金GOでは、AIが入力された経営情報をもとに数値計画のドラフトを生成し、整合性の矛盾を自動検出します。
5よくある質問(FAQ)
Q: 数値計画は何年分作ればいいですか? A: ものづくり補助金では3〜5年間の数値計画が必要です。補助事業期間終了後も含めた中期計画として、売上・利益・付加価値額・給与支給総額の推移を年度ごとに記載してください。
Q: 売上の根拠として顧客名を書く必要がありますか? A: 顧客名を明記すると説得力が大幅に上がります。「A社から年間○○個の発注見込み」のように具体的に書けると、市場ニーズの裏付けとして最強のエビデンスになります。秘密保持が必要な場合は「某上場メーカー」等の表現でも可能です。
Q: 付加価値額の年率+3%は難しいですか? A: 設備投資を行う場合、新規の減価償却費が付加価値額に加算されるため、投資自体が付加価値額の向上に貢献します。この点を計画書に明記すると、達成の蓋然性が高く評価されます。
Q: 楽観・中立・保守の3パターンは必ず書くべきですか? A: 必須ではありませんが、記載すると審査員の信頼感が大幅に向上します。保守シナリオでも投資回収が可能であることを示せれば、「無理のない計画」として高く評価されます。
参考にした公式情報
制度情報は公募回ごとに更新されます。申請前には必ず最新の公募要領・交付規程をご確認ください。
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